以前、 自作プログラムをプレゼンテーションする中学入試を紹介し、 入試の多様化をお伝えしました。
今回紹介する入試問題も、 中学入試の変化を強く感じるさせるものではないでしょうか。
なぜ今、入試が変わるのか? この本質的な質問の答えは、 入試問題にヒントがありそうです。
以下は開成中学校の国語の入試問題です。 自分が社長になったつもりで一度考えてみてください。
問題
北海商事株式会社は北海道の名産物を、各地に紹介し、販売する会社です。大手百貨店の安田デパートから「月末の休日に、新宿支店と池袋支店で北海道物産展を行うので、カニ弁当を仕入れてほしい」と依頼されました。
北海商事では、新宿支店の仕入れ販売を大西社員、新宿支店よりやや規模の小さい池袋支店の仕入れ販売は小池社員が担当することになりました。両支店での販売を終え、翌月の月間報告会では、販売部長がグラフを示しながら、両支店での成果を社長に報告しました。
「大西社員は販売用に500個、小池社員は450個の弁当を発注しました。最終的に、新宿支店では見事にカニ弁当は完売となりました。池袋支店では、20個の売れ残りが生じてしまいました。グラフは、九時の開店から十九時の閉店までの、弁当の売れ行き総数を示したものです。2人の社員の評価について、社長はいかがお考えになりますか」
この報告を聞いて、社長は「私は、小池社員を高く評価する」と答え、自分の考えを示しました。
【問】大西社員より小池社員の方を高く評価する社長の考えとは、どのようなものでしょうか。「たしかに」「しかし」「一方」「したがって」の四つの言葉を、この順に、ぶんの先頭に使って4文で説明しなさい。 (2018年度開成中学校 改題) 出典:読売KODOMO新聞(2018年4月19日)
解答のポイントは、
「閉店までに予測される総売上個数」と「発注個数」のズレが、 小さかったかどうかということです。 そしてこの問題の特徴は、
・評価の理由を自ら考え文で答えるということ
・発注、売上予測、顧客満足度、社員評価といった ビジネス感覚が必要だということ
以上から、この問題を出題した学校は、 思考力や多面的なものの見方、 社会で即戦力となるビジネス感覚、 これらを持った人材を求めていることがわかります。
ここで冒頭の本質的な質問、 「なぜ今、入試が変わるのか?」 の答えを入試問題をヒントにして逆算して考えてみると、
入試が変わってきた (暗記から活用に) ↓ 学校が求める人材が変わってきた (受け身から主体的に) ↓ 社会・企業が求める人材が変わってきた (指示待ちから自発的に、模倣から創造に) ↓ 社会が変わってきた (量から質へ)
ということになるのではないでしょうか。
今回紹介したような問題を出題する学校が、 これからどんどん増えていくことでしょう。 なぜなら、「社会が求める人材」、 さらには、「社会変化に対応できる人材」、 このような人材を育成することが、 教育の目的の一つであるはずだからです。
しかし、大切なことは、 入試だけに注目するのではなく、 「なぜ変わるのか」という本質を考え、全体をとらえて、 準備・対策していくことではないでしょうか。